北九州に行った私は、
しばらく、
自分の立ち位置を決められませんでした。
実家を離れ、
守ると決めたものを守られた現実はなかっ
た
。
そんな中で、
一人の女性と出会います。
彼女は、
美容師でした。
華やかな世界にいる人、
という印象よりも、
手を動かし続ける人、
という印象の方が強かった。
朝から晩まで立ち、
人と向き合い、
技術で信頼を積み重ねる。
その姿は、
どこか、
料理人だった父や、
現場を支えていた人たちと並んで
見えました。
話をするうちに、
私は初めて、
全く違う業界の話を
真正面から聞いてみます。
美容室のこと。
お客さんとの距離感。
技術職として生きる厳しさ。
売上だけでは測れない価値。
リピートがすべてを決める世界。
その話は、
旅館とホテルとは違いますが、
本質は、非常に近いと感じました。
私は、
美容室やエステの経営に
関わります。
何かを教えるわけでも、
決断をするわけでもない。
美容の世界は、
感覚だけで恐縮しているようで、
実はとても数字に厳しくしないとマズイ。
回転率。
ゲスト。
リピート率。
それらを意識しながら、
同時に、
「人」を相手にする。
私はその世界に、
不思議な居心地の良さを感じていました。
経営でも、
家業でも、
過去の延長がある。
だが、
人を相手にし、
現場を駆け回り、
信頼して立ち向かう仕事。
それは、
私がこれまで見てきたものと、
どこかで繋がっていました。
北九州でのこの時間は、
再出発というより、
新しい視点を手に入れる期間だったのだと思います。
そして、
この出会いが、
後に、
私の人生と仕事の方向性を
大きく変えていくことになります。
この時点では、
まだ、
それがどこへつながるのかは
わかりません。
ただ、
人生は、
終わったところから別
の形で続いていく。
そのことを、
私は静かに理解していました。