北九州にあったものは、
すべてなくなりました。
自宅も、
車も、
店舗も、
不動産も。
長い時間をかけて積み上げてきたものが、
一つずつではなく、
一気に手を離れていったという感覚でした。
抵抗できなかったわけではありません。
何もしなかったわけでもありません。
ただ、
結果として、
何一つ残らなかった。
その事実だけが、
はっきりと残りました。
北九州という場所には、
仕事の記憶も、
判断の記憶も、
誇りだった時間もありました。
同時に、
失敗の痕跡も、
後悔も、
戻れない選択も詰まっていた。
だからこそ、
そこに留まる理由は、
もうありませんでした。
私たちは、
福岡へ引っ越しました。
前向きな決断だったとは言えません。
再スタートという言葉を使うには、
あまりにも現実的でした。
ここを離れなければ、
前に進めない。
それだけの判断です。
引っ越し当初は、
生活を整えることで精一杯でした。
段ボールの山。
最低限の家具。
見慣れない景色。
過去の話をすることも、
未来の話をすることも、
どちらもできない時間。
それでも、
家族はそこにいました。
二人の息子がいて、
同じ屋根の下で、
同じ夜を過ごしていた。
何も持っていなくても、
「一緒にいる」という事実だけは、
失われていなかった。
北九州で失ったものは、
目に見えるものばかりです。
信用も、
肩書きも、
立場も。
それらが剥がれ落ちたあとに、
残ったのは、
逃げられない現実と、
家族だけでした。
この時、
私はまだ、
立ち直ろうとはしていません。
希望も、
展望も、
語れる状態ではなかった。
ただ、
終わらせきれなかった。
終わらせてしまうには、
背負っているものが、
まだ残っていた。
福岡での生活は、
そうして始まりました。
何かを始めるためではなく、
終わらなかった人生を、
続けるために。
(写真は福岡に引っ越した初日の寝顔です)